テント泊の始め方

宿泊を伴う登山は、日の出入や夜空を観察でき、日帰り登山とはまた違った楽しみがあります。山小屋泊も良いですが、魅力的なテント泊をぜひ体験してみてください。この記事では、まだテント泊をしたことがない方やこれからテント泊をしてみようとお考えの方に向けて、テント泊の魅力や留意点について解説します。あくまでも個人の体験に基づく意見ですが、他ではあまり解説されていないであろう内容をお伝えできるよう努力しましたので、ご参考になれば幸いです。

テント泊のメリット

自然をより体感できる

夜空はもちろん、スズムシなど動物の鳴き声や、風と木の葉が織りなす音も感じることができます。夏には涼しい夜のひとときを過ごすことができ、冬には朝霜の美しさを発見できるでしょう。

他人への気兼ねが少なくて済む


繁忙期の山小屋では他人と同じ布団で寝ることもありますが、テント泊では自分のプライベート・スペースを確保できます。

費用が安く済む


有料のテント場であっても、山小屋の宿泊料に比べれば圧倒的に廉価に宿泊可能です。装備の費用は数回宿泊すれば十分回収できます。

テント泊用装備

必須の装備

テント

室内に雨が降り込みにくく前室に靴を置けることから、ダブル・ウォール式がおすすめです。暑がりの方あるいは真夏に登山される方は、風通しが圧倒的に良い出入口が2面あるタイプを、お勧めします。

スリーピングマット

空気注入式の場合、パンクしていないか出発前に確認しましょう。極小さな穴の場合、現地ではパンク箇所を特定することは困難です。

寝袋

テント泊登山の場合、重くて嵩張る化繊素材よりも、ダウン素材がおすすめです。

ザック

収納容量が大きくてもザック自体の質量はあまり変わらず、たとえ中身が少なくてもザックのベルトで調整できますので困ることはまずないですが、容量が小さいと連泊時や冬場に荷物が入らず困りますので、収納容量は大きめにすることをお勧めします。また、自分の体に合っていないと、疲労が増したり、肩や腰が痛くなる原因となりますので、サイズ(背面長)選定は慎重にしてください 。

あると便利な装備

着替え

雨で濡れた時の交換用として、着替えは最低シャツ一着はあると良いです。下山後の入浴後用にも兼用できます。それ以上持っていくかは、自分の体力と相談してください。軽量化のために着替えない方も結構いらっしゃるようです。

耳栓

風により木の葉が擦れるなどは、意外と睡眠の妨げになるものです。

アイマスク

月明かりは意外と明るく、眠れない場合があります。特に満月の夜は懐中電灯なしでもなんとか歩ける明るさと言われているほど明るいので、明るいと眠れない方はアイマスクをご持参ください 。

ウェットティッシュ

お風呂に入れない場合には、あると便利です。

手袋

平地では手袋が必要ない時期でも、高地では明け方は冷え込みが激しく手がかじかんで撤収が困難となる可能性がありますので、必要かどうか検討してください。

設営の注意点

テントの組み立て方がわからないと焦りますので、テントの設営を一度練習することをお勧めします。また、畳み方が不適切だと収納袋に入らない場合がありますので、収納方法も練習してください。
 人通りが多い通路の近くに設営すると、安眠を妨げられます。傾斜地に設営すると、立っている時にはわずかな勾配に思えても、寝袋・マットは摩擦が小さい化学繊維製が多いので、横になると体が滑る場合があります。地面が凸凹しているところへの設営は、テントの底部に穴が開く原因となります。
 テントの内部および近傍では火器を使用しないことをお勧めします。狭いテント内で火器を使うと、鍋を倒して火傷を負ったり、一酸化炭素中毒の原因となります。テントの近傍で火器を使うと、風になびかれたテントに火が燃え移る原因です。
 組み立て、撤収時に風でテントや付属品が飛ばされないように注意しましょう。
 撤収のとき紐をペグ(杭)から外す際には、ペグも一緒に抜いてまとめておくか収納すると良いです。ベグを残しておくと、ペグは小さく色も目立ちませんので、地面に積もった木の葉や砂に紛れてペグを見失う原因となります。

テント泊計画の立て方

日帰り登山よりはテント泊の装備は重くなり、登山に時間がかかる場合がありますので余裕を持った計画とすることをお勧めします。日の出前約30分間、あるいは日の入り後約30分間は、空が薄明るく、ライトなしで行動できる状態(市民薄明という)になります。
 標高が高くなるにつれて気温は下がり、また一日の中では明け方が最も気温が低いですので、日帰り登山よりも防寒着が必要になることが多いので、気象データをもとに十分検討してください。

とりあえず近場のテント場やってみよう

以上、色々と細かな点を解説しましたが、あまり心配しすぎることもありません。初めてのテント泊が不安な方は、まずは、標高が低くて、登山口から近いテント場に行かれてみてはいかがでしょうか?